【アンケート結果】兵庫県の中小製造業に聞いた!GX・脱炭素の現状と今後の対策とは?

脱炭素化のご提案

近年、GX(グリーントランスフォーメーション)や脱炭素というキーワードが注目され始めています。大企業を中心に、温室効果ガス排出量の開示や削減目標の設定が求められ、それに伴い中小企業にもGX対応が求められるケースが増えてきました。特に、製造業では取引先からの要請やエネルギーコストの高騰を背景に、脱炭素に向けた取り組みが重要になっています。

しかし、実際の現場では、「何から始めればよいかわからない」「コスト負担が大きい」「人手不足で対応できない」といった課題の声も多く聞かれます。では、兵庫県の中小製造業はGX・脱炭素にどのように向き合っているのでしょうか?

本記事では、兵庫県内の中小製造業256社を対象に実施したアンケート結果をもとに、GXの取り組み状況や課題、企業が求める支援策について解説します。さらに、実際にGX推進に成功した企業の事例も紹介し、中小製造業が脱炭素を進めるヒントをお届けします。

GX・脱炭素を進めることで、コスト削減や企業価値の向上にもつながる可能性があります。ぜひ、貴社の経営戦略の参考にしてください!

本記事は2025年2月19日に神戸産業振興センターで中小企業GX研究会が発表した内容の一部を抜粋したものをご紹介しています。

目次

アンケート概要

調査対象:兵庫県内の中小製造業(例:金属加工業、食品加工業、機械製造業など)

調査方法:アンケート & ヒアリング調査

回答企業数:256社

調査期間:2024年10月~2024年12月

目的:中小製造業のGX・脱炭素の取り組み状況や課題を把握し、今後の支援策を検討するため

アンケート結果①兵庫県の中小製造業におけるGX・脱炭素の取組状況

今回のアンケートは公益財団法人ひょうご産業活性化センター様、西兵庫信用金庫様、尼崎信用金庫様にご協力いただき収集しました。また、全国的なデータは経済産業省「2024年版ものづくり白書」、中小企業庁「2024年版中小企業白書」、独立行政法人中小企業基盤整備機構「第178回中小企業景況調査報告書」を抜粋しております。

業況判断DIの推移

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」の業況判断DIの推移をみると、「大企業製造業」「中小企業製造業」ともに2023年度は回復傾向にあったが、2024年3月調査においてはマイナスに転じている。この傾向は直近の2024年12月調査でも継続しており、「業況が悪い」と回答した企業が増えていることを示している。

業況判断DI

(出典:2024年版ものづくり白書)

中小企業の売上額DIの推移

次に、中小企業景況調査報告書の中小企業の売上額DI(「好転」-「悪化」)について、特に製造業の推移を中心にみると、2023年にはコロナ禍からの経済再開により需要が急増したことにより一時的に回復のピークを迎えているが、2024年に入ると再びマイナスの方向に転じている。

売上高DI

(出典:(独)中小企業基盤整備機構 第178回中小企業景況調査報告書)

産業別原材料・商品仕入単価DIの推移

産業別原材料・商品仕入単価DIをみると、コロナ禍以降に急激に上昇し22年度をピークに上昇は緩やかになっているが、全産業で69.4、製造業では69.2と高い水準で推移しており、仕入単価の上昇を感じている企業が多いことを示している。

産業別原材料・商品仕入単価DIの推移


(出典:(独)中小企業基盤整備機構 第178回中小企業景況調査報告書)

従業員過不足DIの推移

従業員数過不足DIにおいても、2020年のコロナ禍には経済活動の停滞や企業倒産の増加により、一時的に従業員の過剰状態を示しているが、コロナ禍後の経済回復に伴い、従業員過不足DIは次第に低下し、現在では多くの産業で人手不足が顕在化している。製造業でも、▲18.2と、労働力不足が示されている。
企業はこの変化に対し、労働力の確保や育成、効率的な労働環境の整備など、戦略的な対応が求められている。

従業員過不足DI

(出典:(独)中小企業基盤整備機構 第178回中小企業景況調査報告書)

脱炭素化の取組状況(全産業)

2019年から2023年までの5年間における脱炭素化の取組状況の推移をみると、脱炭素化に取り組む企業が増えてきていることが分かる。ただし、「段階2:事業所全体での年間CO2排出量(Scope1.2)を把握している」以上の企業が2割程度であるため、まだ、具体的な取組に至っていない企業が多いと推測される。

中小企業白書

(出典:中小企業庁「2024年中小企業白書」)

脱炭素化の取組状況(2023年・業種別)

製造業の脱炭素化の取組状況は、4割弱の企業が段階2「事業所全体での年間CO2排出量を把握している」以上の取組を進めており、製造業の脱炭素化の取組が他業種に比べて進んでいることが分かる。ただし、製造業のみならず全産業においても6割超の企業が脱炭素の取り組みをしておらず、今後の対応の余地が大きいと言える。特に、製造業はエネルギー消費量が比較的多い業種であり、脱炭素化への取り組みが急務である。

中小企業白書

(出典:中小企業庁「2024年中小企業白書」)

脱炭素化に向けた最初の取組内容

脱炭素化に向けた最初の取組内容は、「エネルギー使用量の削減」や「エネルギー効率の良い設備への更新等」がどの段階においても最も多い回答となっている。特に段階5の企業は、CO2排出量の算定や削減目標の設定といった、より高度な取り組みに着手しており、これは経営戦略として脱炭素化を位置付けていることを示唆している。

脱炭素化に向けた最初の取組内容

(出典:中小企業庁「2024年中小企業白書」)

アンケート結果②GX・脱炭素における主な課題

次に、今回アンケートから判明したGXや脱炭素における主な課題について取り上げます。

CO2排出量削減取り組みの進め方

CO2排出量削減取り組みへの進め方については、「自社のみで推進(46社)」「セミナーなどの情報収集(37社)」「専門家の支援を活用(20社)」となっており、自社でできる取り組みをセミナー等で情報収集しながら進めていることが分かる。
また、専門家等の支援体制が十分と言えず、CO2排出量削減の取り組みに対するハードルが高いことが伺え、中小企業診断士等の専門家支援の体制強化が課題と言える。

CO2排出量削減取り組みへの進め方

CO2排出量削減以外の副次的効果

CO2排出量削減以外の副次的効果は、「取引先に評価された(44社)」が最も多く、対外的な企業イメージアップ効果があることが言える。しかし、「特になし(38社)」が次に続いており、副次的効果を得ていないと回答する企業も少なくなく、取り組みの効果測定が不十分である可能性や、効果が表れるまでに時間がかかることが考えられる。

CO2排出量削減以外の副次的効果

取引先からのCO2排出量削減の要請有無

取引先からのCO2排出量削減の要請有無については、「要請あり」が約2割であり、兵庫県内でも削減要請が出始めている。今後、上場企業等の大企業取引先との取引を継続するためには、CO2排出量の測定や削減は必須になる可能性が高い。

取引先からのCO2排出量削減の要請有無

脱炭素化を進める上で障害となっていること

CO2排出量削減を進める上で障害となっていることについては、「コスト負担(138社)」が最も多く、CO2削減に向けた取組で資金不足が大きな課題になっている。
また「人員不足(126社)」「専門知識の欠如(110社)」と続き、知識不足やリソースの制約がCO2排出量削減への主要な障害でありこれらを解決するための具体的な支援が求められている。

CO2排出量削減を進める上で障害となっていること

この回答から、多くの中小製造業では、「コスト負担」「人員不足」「専門知識の欠如」の3つを課題に感じていることが明らかになりました。では、これらに対してどういった支援策を求めているのか、下記アンケート結果から探っていきます。

アンケート結果③:中小製造業が求める支援策

脱炭素化を進める上で障害となっている3つの課題に対して、中小製造業が求める支援策についてアンケート結果からは以下となっております。

障害を解決するために必要な支援について

こちらのアンケートからも多くの中小製造業で資金不足が懸念されており、「補助金・融資制度の情報」を求めていることが分かります。

【アンケート結果】障害を解決するために必要な支援について

また、取り組もうと思っているが、何からやればいいのか分からないといった声も多く寄せられ、公的機関のセミナーや窓口相談の充実、中小企業診断士等の専門家活用の必要性を感じる結果となっています。

この回答を受けて、私含め中小企業GX推進研究会では、公的機関と連携し、セミナーや窓口相談の充実や補助金活用の相談受付を行い、コスト不足や専門知識の欠如に対処していきますので、ぜひご相談ください。

事例紹介:脱炭素化を推進している兵庫県の中小企業

では、脱炭素化を推進している兵庫県下の中小企業はどういった取り組みをしているのか数社取り上げます。それぞれの企業がどのようにして事業の持続可能性と市場競争力を高めているのか自社の取り組みに活かせるヒントを探していただきたいと思います。

計測機器製造のA社事例

売上高20億~30億円、従業員数100名~150名の中堅企業

A社は、電力消費量を詳細に分析し、環境目標を部門ごとに設定・管理する仕組みを構築しています。さらに、ISO14001を取得し、環境対応を経営戦略の一環として積極的に推進。社内には自然と環境意識が根付き、継続的にPDCAサイクルを回せる体制が整っています。

具体的な取り組みとして、照明のLED化や空調管理の最適化を進め、エネルギー効率の向上を図っています。その結果、社内の環境負荷を削減できただけでなく、こうした姿勢が取引先から高く評価され、企業の信頼性向上や新たなビジネスチャンスの創出につながっているとのことです。

A社の事例は、脱炭素経営を推進することで、単なるコスト削減にとどまらず、取引先との関係強化や新規案件の獲得にもつながることを示しています。環境対応を経営の武器とする好例と言えるでしょう。

配電・制御システム製品製造のB社事例

B社は、従業員100~150名規模の配電・制御システム製品の製造企業です。売上高は非公開ですが、省エネ対策の一環として照明のLED化などを進めるとともに、中小企業版SBT認証の取得を目指しています。

また、自社製品を活用して顧客企業の脱炭素化を支援する新たなサービス展開も視野に入れており、脱炭素化を単なるコストではなくビジネスチャンスとして捉え、前向きに取り組んでいる点が特徴的です。

取引先の要請と脱炭素化の重要性

今回のアンケートでは、「取引先からCO2排出量削減の要請があるか?」という質問に対し、約2割の企業が「YES」と回答しました。これは、上場企業を中心に、国際的な脱炭素化の動きが取引先にまで影響を及ぼしていることを示しています。

中小企業においても、こうした動きに対応することが、今後の取引関係を維持・拡大するうえで重要なポイントとなるでしょう。

中小企業版SBT認証のメリット

中小企業版SBT認証は、自社のCO2排出量を正確に把握し、5年後の削減目標を設定することで、脱炭素化への取り組みを対外的に示す有効な手段です。

この認証を取得している企業は、環境意識の高さを証明できるため、大企業との取引において優位に立てる可能性があります。特に大企業では、社内の意思決定プロセスにおいて「この会社はSBT認証を取得しているので、取引しても安心」といった裏付けが求められるケースが多く、認証の有無が重要な判断材料となることもあります。

脱炭素化への取り組みをサポート

こうした背景を踏まえ、脱炭素化への取り組みは避けて通れない課題となっています。まずは照明のLED化や設備の高効率化など、取り組みやすい施策から始めるのがおすすめです。

また、補助金の活用や中小企業版SBT認証の取得などについては、専門的な知見が必要となるため、中小企業GX研究会でもご相談を受け付けております。関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。

脱炭素化を経営の武器に変え、持続可能な成長を共に目指していきましょう。

まとめ & 今後の展望

今回は、兵庫県内の中小企業を対象に実施した脱炭素化に関するアンケートの結果を抜粋してお伝えしました。すべての内容を公開することはできませんが、ご相談いただければ、より詳しい情報をご提供できますので、お気軽にお問い合わせください。

まずは取り組みやすい施策から

脱炭素化に取り組みたいものの、「何から手をつけてよいかわからない」という企業は少なくありません。そのような場合は、以下のような比較的取り組みやすい施策から始めることをおすすめします。

  • 照明のLED化
  • 空調設備の高効率化(環境性能の良い設備への更新)

こうした設備更新には、国や自治体が提供する補助金を活用できる場合があります。

ただし、補助金の要件は細かく、申請手続きも煩雑なことが多いため、スムーズな活用には専門家のサポートが有効です。申請手続きや要件の確認など、お困りの際はぜひ中小企業診断士にご相談ください。

組織全体で取り組むことが成功の鍵

脱炭素化の推進は、社長や経営層だけの取り組みでは実現できません。社内全体で意識を高め、行動に移していくことが重要です。そのために、次のような施策を取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 脱炭素化プロジェクトチームの編成
  • 定期的な社内会議の実施

これにより、社員の意識向上とともに、具体的な施策をスムーズに進めることができます。また、こうした組織文化の醸成やプロジェクトの推進役を担うのも、中小企業診断士の得意分野です。脱炭素化を成功させるための体制づくりについても、お気軽にご相談ください。

持続可能な経営に向けて、共に取り組んでいきましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

髙倉啓成のアバター 髙倉啓成 中小企業診断士

環境省認定制度 脱炭素アドバイザーベーシック(炭素会計アドバイザー)
現在、大手総合電機メーカーの子会社で経理業務を担当し、企業内診断士として活動中。財務会計や予算管理、経営計画の策定、品質ISOの内部監査などを通じて、経営基盤の強化と業務品質の向上に取り組んでいます。今後、中小企業におけるGX対応が必須となる中、省エネ投資やSBT認証取得等、支援いたします。

目次