中小企業もESG融資で成長!資金調達成功事例と審査ポイントを解説

中小企業もESG融資で成長!資金調達成功事例と審査ポイントを解説

近年、ESG(環境・社会・企業統治)への取り組みが企業価値を左右する時代となり、中小企業にとってもESG経営は避けて通れないテーマとなっています。

その中で、「ESG融資」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか?

ESG融資とは、環境や社会に配慮した事業を行う企業に対して、有利な条件で融資を行う制度です。

「大企業だけの制度でしょ?」と思われた方もいるかもしれませんが、実は中小企業でもESG融資を活用して事業を成長させている事例は数多く存在します。

本記事では、

  • ESG融資とは何か?
  • どのようなメリットがあるのか?
  • どのような審査が行われるのか?
  • 実際にESG融資を受けた企業はどのような取り組みをしているのか?

といった疑問を、中小製造業の経営者や管理者の方々に向けて、わかりやすく解説します。

ESG融資は、資金調達手段の一つとしてだけでなく、企業価値向上や持続的な成長を促すための強力なツールとなり得ます。

ぜひ本記事を参考に、ESG融資をあなたの会社の未来に活かしていただければと思います。

目次

ESG融資とは?中小企業経営者が知っておくべき基礎知識

ESG融資の定義と背景

ESG融資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した事業を行う企業に対して、金融機関が提供する融資のことです。

従来の融資は、主に財務状況を基に審査が行われていましたが、ESG融資では、企業のESGへの取り組み状況も重要な評価項目となります。

ESGへの取り組みが評価されると、金利の優遇や融資枠の拡大といったメリットが得られます。

ESG融資は、持続可能な社会の実現に向けて、企業のESG経営を後押しする金融の仕組みとして、近年注目を集めています。

ESG融資の種類と特徴

ESG融資には、いくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

  1. 金利優遇型融資: ESGへの取り組み状況に応じて、金利が優遇される融資です。
  2. 保証付き融資: 信用保証協会などの保証が付くことで、融資を受けやすくなる融資です。
  3. サステナビリティ・リンク・ローン(SLL): ESG目標の達成度合いに応じて、金利が変動する融資です。目標を達成すれば金利が引き下げられ、未達の場合は金利が引き上げられます。
  4. その他のESG融資商品: グリーンボンドやソーシャルボンドなど、特定のESGプロジェクトに資金使途が限定された融資もあります。

なぜ今、ESG融資が注目されているのか?

ESG融資が注目されている背景には、以下の2つの大きな要因があります。

  1. 金融庁のESG金融促進プログラム: 金融庁は、2018年に「ESG金融促進プログラム」を策定し、ESG金融の普及を後押ししています。これにより、金融機関はESG融資に積極的に取り組むようになり、中小企業にとってもESG融資を受けやすくなっています。
  2. 2022年10月のTCFD提言に関するアンケート結果: 2022年10月、金融庁はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく企業の取り組み状況に関するアンケート結果を公表しました。このアンケートでは、多くの企業がESG情報開示に取り組んでいるものの、中小企業では取り組みが遅れていることが明らかになりました。この結果を受け、金融機関は中小企業のESG経営を支援するため、ESG融資の提供に力を入れています。

中小企業がESG融資を受けるメリット・デメリット

ESG融資は、中小企業にとって資金調達手段の一つとして魅力的な選択肢ですが、メリットだけでなくデメリットも理解した上で検討する必要があります。

メリット

  1. 資金調達コストの削減: ESG融資は、金利の優遇や保証料の減免など、資金調達コストを削減できる可能性があります。
  2. 企業価値の向上: ESGへの取り組みを評価されることで、企業イメージやブランド力の向上につながり、新たな取引先や顧客の獲得、優秀な人材の確保にも役立ちます。
  3. 社会的責任の遂行: ESG融資は、環境や社会に貢献する事業を支援するものであり、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。

デメリット

  1. 情報開示の負担: ESG融資を受けるためには、ESGに関する情報開示が求められます。情報収集や報告書作成には、一定の労力とコストが必要となります。
  2. 目標達成のプレッシャー: サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)などの場合、ESG目標の達成状況に応じて金利が変動するため、目標達成へのプレッシャーがかかります。
  3. 審査基準の厳格化: ESG融資は、通常の融資よりも審査基準が厳格な場合があります。ESGへの取り組み状況が不十分な場合、融資を受けられない可能性もあります。

これらのメリット・デメリットを踏まえ、自社の状況に合わせてESG融資の活用を検討することが重要です。

ESG融資の審査基準と準備

ESG経営の重要性

① ESG経営とは

ESG経営とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの要素を考慮し、長期的な視点で企業価値の向上を目指す経営のことです。

具体的には、

  • 環境(E): 環境への負荷を減らす取り組みです。工場の排水をきれいにしたり、電気の使用量を減らしたり、太陽光発電を取り入れたりすることなどが挙げられます。
  • 社会(S): 従業員や地域社会にとって良い取り組みです。従業員の労働環境を改善したり、地域社会に貢献する活動を行ったりすることなどが挙げられます。
  • 企業統治(G): 会社を公正・透明に運営するための仕組みです。法律を守ることや、情報公開をしっかり行うことなどが挙げられます。

② 中小企業におけるESG経営の必要性

かつては、ESG経営は大企業だけのものと考えられていましたが、現在では中小企業にとってもESG経営は重要な課題となっています。

なぜなら、

  • 取引先からの要求: 大企業は、取引先の中小企業に対してもESGへの取り組みを求めるようになっています。
  • 消費者意識の変化: 環境や社会問題に関心を持つ消費者が増え、ESGに配慮した企業の製品やサービスを選ぶ傾向が強まっています。
  • 人材確保の観点: 優秀な人材は、ESGに積極的に取り組む企業で働きたいと考える傾向があります。
  • リスク管理の観点: 環境問題や社会問題によるリスクを適切に管理することで、企業の安定的な成長を図ることができます。

ESG融資における情報開示の重要性

ESG融資を受けるためには、金融機関に対してESGに関する情報を開示する必要があります。

① 金融機関が重視するESG要素

金融機関は、ESGの各要素について、具体的な取り組み状況や目標設定などを確認します。

特に重視される要素としては、

  • 環境(E): 二酸化炭素(CO2)の排出量削減目標、再生可能エネルギーの導入状況、廃棄物の削減対策など
  • 社会(S): 従業員の労働時間や残業時間、女性の活躍推進、人権に関する取り組み状況など
  • 企業統治(G): 社外取締役の設置状況、内部統制システムの整備状況、情報開示の透明性など

が挙げられます。

② ESG評価の重要性と具体的な評価方法

金融機関は、ESG評価機関の格付けや独自の評価基準を用いて、企業のESGへの取り組み状況を評価します。

具体的な評価方法としては、

  • ESG格付け: ESG評価機関が企業のESGに関する情報を収集・分析し、A〜Dなどのランクで評価します。
  • ESGアンケート: 金融機関が独自に作成したアンケート調査に回答することで、ESGへの取り組み状況を評価します。
  • ヒアリング: 金融機関の担当者が企業を訪問し、ESGに関する取り組み状況について詳しくヒアリングします。

③ 融資申請に必要な書類と情報

ESG融資を申請する際には、以下の書類や情報を準備する必要があります。

  • 財務諸表: 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など、会社の財務状況を示す書類
  • 事業計画書: ESGに関する目標や具体的な取り組み内容を記載した計画書
  • ESG報告書: ESGに関する情報をまとめた報告書(任意)
  • その他: ESGに関する各種認証(ISO14001、ISO26000など)の取得状況、外部評価機関の評価結果など

ESG経営をアピールするためのポイント

ESG融資の審査を有利に進めるためには、以下の3つのポイントを押さえてESG経営をアピールすることが重要です。

  1. ESG目標設定とKPI策定: 具体的なESG目標を設定し、その達成度合いを測るためのKPI(重要業績評価指標)を策定しましょう。例えば、「2030年までにCO2排出量を20%削減する」といった目標を設定し、毎年のCO2排出量をKPIとして計測するなどが考えられます。
  2. ESGに関する社内体制の整備: ESG推進担当者や委員会を設置し、全社的なESG経営体制を構築しましょう。従業員へのESGに関する研修や啓発活動も重要です。
  3. ESGに関する外部認証の取得: ISO14001(環境マネジメントシステム)やISO26000(社会的責任に関する指針)、中小企業版SBTなどのESGに関する外部認証を取得することで、客観的な評価を得ることができます。

中小企業のESG融資成功事例

国内事例

① 金融機関によるESG融資の取り組み

日本においては、金融庁が2019年から「ESG金融促進プログラム」をスタートさせ、ESG融資を積極的に推進しています。

地方銀行や信用金庫といった地域金融機関も、地域の中小企業のESG経営を支援するため、独自のESG融資商品を開発・提供しています。

例えば、尼崎信用金庫は、地域特性を考慮したESG評価項目を組み込んだ「ローカルベンチマーク」を策定し、それに基づいたESG融資を行っています。

② 中小企業のESG融資活用事例

実際にESG融資を活用している中小企業の事例は、まだ多くはありませんが、徐々に増えてきています。

例えば、ある中小製造業者は、工場の省エネ設備導入や廃棄物削減の取り組みを評価され、ESG融資を受けました。

その結果、資金調達コストを削減できただけでなく、企業イメージ向上にもつながり、新たな取引先の開拓にも成功しています。

海外事例

① EUのESG金融政策

EU(欧州連合)は、ESG金融の先進地域であり、その政策は日本にも大きな影響を与えています。

特に、

  • EUタクソノミー: 環境的に持続可能な経済活動を分類するための共通の基準
  • EBA(欧州銀行監督機構)によるストレステスト: 気候変動リスクが銀行の経営に与える影響を評価するテスト

は、ESG金融の国際的な潮流を形成しています。

② 欧州銀行のESG融資への取り組み

欧州の銀行は、ESG融資に積極的に取り組んでいます。

代表的な事例として、

  • GLS銀行(ドイツ): 社会的・環境的なプロジェクトに特化した融資を提供
  • BNPパリバ(フランス): 2050年までに投融資ポートフォリオのカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、ESG融資を推進
  • BPM(イタリア): EUの復興基金を活用したESG融資を積極的に展開

などが挙げられます。

これらの事例は、日本の中小企業にとっても参考になる点が多いでしょう。

ESG融資を成功させるポイント

資金調達を成功させるための3つのポイント

ESG融資の審査を突破し、資金調達を成功させるためには、以下の3つのポイントを意識することが重要です。

  1. ポイント1:経営戦略とESGの統合

ESGを単なるCSR活動として捉えるのではなく、経営戦略の中核に据えることが重要です。

自社の事業とESGの関連性を明確にし、ESG目標を経営目標に組み込むことで、より説得力のある事業計画を策定できます。

  1. ポイント2:SDGsとの連携

SDGs(持続可能な開発目標)は、ESGと密接に関連しています。

自社の事業がSDGsのどの目標に貢献できるかを明確にし、その貢献度合いをアピールすることで、ESGへの取り組みをより具体的に示すことができます。

  1. ポイント3:地域社会への貢献

地域金融機関は、地域経済の活性化に貢献する企業を積極的に支援する傾向があります。

自社の事業が地域社会にどのように貢献しているか、あるいは貢献できるかを具体的に示すことで、ESG融資の審査を有利に進めることができます。

ESGコンサルティングに中小企業診断士の活用

ESG経営やESG融資に関する知識やノウハウが不足している場合は、専門家である中小企業診断士に相談することをおすすめします。

中小企業診断士は、経営全般に関する幅広い知識と経験を有しており、ESG経営の導入や情報開示、融資申請など、さまざまな面でサポートを受けることができます。

ESG融資以外の資金調達方法

ESG融資以外にも、中小企業が活用できる資金調達方法はいくつかあります。

  1. 補助金・助成金:国や地方自治体が、ESG関連の設備投資や研究開発に対して補助金や助成金制度を設けています。これらの制度を活用することで、資金調達の負担を軽減できます。
  2. クラウドファンディング:インターネットを通じて、不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する方法です。ESGに共感する人々から資金を集めることで、事業への賛同を得ることもできます。
  3. エンジェル投資家・ベンチャーキャピタル: 成長性の高い企業に対して、出資を行う個人投資家や投資ファンドです。ESGに特化したエンジェル投資家やベンチャーキャピタルも存在します。

まとめ:ESG融資で中小企業の未来を拓く

ESGは、企業の持続的な成長にとって不可欠な要素となりつつあります。

ESG融資は、資金調達手段としてだけでなく、ESG経営を促進し、企業価値向上につなげるための有効なツールです。

中小企業の皆様には、ぜひESG融資の活用を検討し、自社の持続的な成長と社会への貢献を目指していただきたいと思います。

ESG経営と資金調達の今後

ESG金融は、世界的な潮流として今後もますます発展していくと考えられます。

日本においても、金融庁のESG金融促進プログラムやTCFD提言など、ESG金融を後押しする政策が打ち出されています。

中小企業にとって、ESG経営への取り組みは、資金調達の可能性を広げるだけでなく、企業価値向上、リスク管理、人材確保など、さまざまなメリットをもたらします。

中小企業がESG融資を活用する上でのアドバイス

ESG融資の活用を検討する中小企業の皆様には、以下のアドバイスをお伝えします。

  • まずは情報収集: ESG融資に関する情報収集を行い、自社にとって最適な融資制度や金融機関を選びましょう。
  • 専門家への相談: ESG経営や融資申請に関する疑問や不安があれば、専門家である中小企業診断士に相談しましょう。
  • 長期的な視点で取り組む: ESG経営は、短期的な成果を求めるものではなく、長期的な視点で取り組むことが重要です。

専門家による相談窓口の紹介

ESG融資に関する相談窓口は、各金融機関や商工会議所、中小企業支援センターなどに設置されています。

また、中小企業庁のウェブサイトでも、ESG経営やESG融資に関する情報を提供しています。

これらの情報や相談窓口を活用し、ESG融資をあなたの会社の未来に活かしてください。

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この記事を書いた人

総合電機メーカーを20年間勤務、その後ものづくり企業支援のために中小企業診断士資格を獲得して独立し、15年目に入った経営コンサルタントです。現在、集中支援している顧問企業の社会課題と向き合うため、中小企業GX情報サイトを構想しました。皆さまと一緒に成長したく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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