中小企業必見!ESG地域金融実践ガイド(2)ESG地域金融の実践ポイント

中小企業必見!ESG地域金融実践ガイド(2)ESG地域金融の実践ポイント

前回の記事では、ESG地域金融の基礎を学びました。今回は、いよいよ実践編となります。

環境省が発行している「ESG地域金融実践ガイド」をもとに、地域金融機関がESG金融を実際にどうやって進めているのか、その具体的なポイントをわかりやすく解説していきます。それを理解すれば我々、中小企業側も融資する側の立場が理解できるってわけです。

ESG金融って、自分の会社のことだけ考えてればいいって性質のものではありません。銀行も、自分たちが行う融資やサポートが、取引先の会社だけでなく、その先の取引先や地域全体にどんな影響を与えるのか、しっかり考える必要があるわけです。

そのため彼らも地域の資源や課題を活かしたり、地域の主要産業を応援したり、個別の企業を支援したり。これらの方法をうまく組み合わせることで、地域をもっと良くするための効果をさらに高めようとしているのです。

つまり、ESG金融を成功させるためには、

  • 地域の資源を理解し、その価値を見出すこと
  • 地域の産業全体の中で、自社がどんな役割を果たしているのかを理解すること
  • 地域の環境、社会、経済を良くするための取り組みを行うこと
  • 社会の変化を理解し、それに対応していくこと

といったポイントを要視するようになっています。

そして、銀行の中でも、本部と支店が協力し合い、それぞれの役割をしっかり再確認することが大切です。そういった事情も知っておく方がいいですよね。

それでは今回はESG地域金融がどんなものか、具体的なイメージが湧いてくるよう情報を整理します。ぜひ中小企業で働く皆さまもそんな銀行と協力して、ESG経営に取り組んでいただければと思います。そうすることで、会社も地域も、もっと元気になるはずだと思い、この記事を書き進めますね。

目次

ESG地域金融の考え方

さて、それではまず、ESG地域金融を実行する時に重要視する彼らの2つの考え方を整理しておきましょう。

地域金融機関の取り組みの影響

銀行や信用金庫の活動は、お金を貸したり預かったりといった直接的な取引だけにとどまりません。融資や投資を通じて、地域社会全体に大きな影響を与えます。

例えば、環境に配慮せず有害物質を排出する企業への融資は、地域環境の悪化やそこに住む人たちの健康被害につながる可能性があります。一方で、環境に優しい技術を持つ企業を積極的に支援すれば、地域全体の環境が改善され、雇用も増え、新たな産業が生まれるかもしれません。

つまり、銀行が誰にお金を貸し、どんな事業を応援するかによって、地域社会全体が良くも悪くもなる 可能性があるのです。だからこそ、ESG地域金融では、銀行は自分たちの行動が地域社会にどんな影響を与えるのかを深く考え、責任ある行動をとることが重要視されています。

バリューチェーン全体や地域への影響

銀行の責任は、お金を貸す相手企業だけにとどまりません。その企業が関わる取引先全体、さらには地域社会全体への影響まで考慮する必要があります。

例えば、あるメーカーにお金を貸した場合、そのメーカーが使う原材料や部品を供給する会社、そしてそのメーカーの製品を販売するお店も、間接的に銀行の支援を受けていることになります。もし、そのメーカーが環境に悪い材料を使っていたら、その影響は取引先全体に広がり、最終的には地域環境やそこで暮らす人々にも悪影響を及ぼすかもしれません。

銀行の行動は、直接取引のある企業だけでなく、その企業とつながりのある多くの企業、そして地域社会全体に影響を与えることを、常に意識しておく必要があるのです。これがESG地域金融の重要な考え方です。

銀行は、こうした広い視野を持って、地域社会全体にとって何が最善なのかを考えながら、ESG金融に取り組んでいるのです。

3つのアプローチでESG地域金融を実践

「ESG地域金融実践ガイド」によると、ESG地域金融には3つのアプローチがあります。それぞれのアプローチの特徴を、中小企業で働く皆さまにもわかりやすく解説していきます。

地域資源・課題を対象にした取り組み

これは、地域の資源や課題を活かして、地域全体を元気にする取り組みです。

例えば、

  • 地域の自然エネルギー(太陽光、風力、地熱など)を活用した発電事業への投資
  • 地域の特産品を使った新しい商品開発や観光振興への支援
  • 地域の空き家問題や高齢化問題の解決に向けた取り組みへの融資

などが挙げられます。

主要産業を対象にした取り組み

これは、地域の主要産業を支援し、その産業を活性化させる取り組みです。

例えば、

  • 地域の主要産業である農業や漁業の生産性向上や販路拡大を支援
  • 地域の伝統工芸や観光業などの振興を支援
  • 主要産業における環境負荷低減や働き方改革を支援

などが挙げられます。

個別企業を対象にした取り組み

これは、個々の企業のESG経営を支援する取り組みです。

例えば、

  • 省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用を促進するための融資
  • 環境に配慮した製品開発やサービス提供を支援
  • 女性活躍推進や従業員の健康増進など、働きやすい職場環境づくりを支援

などが挙げられます。

3つのアプローチを組み合わせ、相乗効果を高める

これらの3つのアプローチは、それぞれ単独で取り組むこともできますが、組み合わせて取り組むことで、より大きな効果を生み出すことができます。

例えば、地域資源を活用した再生可能エネルギー事業を支援する際には、その事業に関わる企業への個別支援や、再生可能エネルギー関連産業の振興といった取り組みを組み合わせることで、より効果的に地域経済を活性化させることができます。

重要なのは、自社の強みや地域の特徴を活かしながら、最適なアプローチを選択することです。

ESG地域金融で共通して重要な4つのポイント

ESG地域金融を実践する上で、地域金融機関が共通して意識すべき4つのポイントを解説します。これらのポイントは、地域金融機関がESG経営を実践する上で、基礎となる考え方であり、どのアプローチを採用する場合でも重要となります。

地域資源の把握とその価値の理解

地域には、その土地ならではの資源があります。美しい自然、伝統文化、特産品、そしてそこに住む人々の skills や knowledge など、多種多様な資源が存在します。しかし、これらの資源の価値が十分に理解されず、活用されていないケースも少なくありません。

ESG地域金融では、地域の資源を様々な角度から見つめ直し、その価値を再発見することが重要です。例えば、放置されたままの森林を適切に管理することで、CO2吸収源としての価値を高めたり、地域住民の skills を活かした新たなビジネスを創出したりすることができます。

バリューチェーンと対象産業/企業の位置づけ把握

バリューチェーンとは、原材料の調達から製品の製造、販売、そして廃棄・リサイクルに至るまでの、一連の流れのことです。ESG地域金融では、このバリューチェーン全体を視野に入れ、対象となる産業や企業がどの位置にあり、どのような役割を果たしているのかを把握することが重要です。

例えば、ある企業を支援する場合、その企業の活動が環境に与える影響だけでなく、その企業から製品を仕入れる企業や、その製品を消費する人々への影響も考慮する必要があります。バリューチェーン全体を俯瞰することで、より効果的なESG金融支援が可能になります。

地域の環境・社会・経済へのポジティブインパクトの創出を目指す

ESG地域金融の目的は、地域経済の発展だけでなく、環境保全や社会課題の解決にも貢献することです。そのため、地域金融機関は、自らの活動が地域にどのような良い影響を与えるのか(ポジティブインパクト)を意識し、それを最大化するための取り組みを行う必要があります。

例えば、環境に配慮した事業への融資や、地域住民の生活向上に貢献する活動への支援などを通じて、地域社会全体の持続可能性を高めることができます。

環境変化の把握とその影響の理解

気候変動やデジタル化、少子高齢化など、社会は常に変化しています。これらの変化は、地域経済や企業活動にも大きな影響を与えます。

地域金融機関は、これらの環境変化をいち早く察知し、その影響を分析することで、将来のリスクを予測し、適切な対応策を講じることができます。また、変化をチャンスと捉え、新たなビジネスモデルの創出や、地域産業の構造転換を支援することも可能です。

これらの4つのポイントは、ESG地域金融を実践する上で、どれも欠かすことのできない要素です。これらのポイントをしっかりと押さえ、地域社会の持続可能な発展に貢献していきましょう。

金融機関でアプローチを有機的に結合させるための仕組み化

ESG地域金融を効果的に推進し、その成果を最大化するためには、地域金融機関全体が一体となって取り組む必要があります。特に、本部と営業店がそれぞれの役割を理解し、密接に連携することで、より効果的なESG金融支援が実現できます。

本部と営業店の連携の重要性

本部と営業店は、それぞれ異なる視点と強みを持っています。本部は、ESGに関する専門知識や広範な情報収集能力を活かし、戦略策定や全体的な方向性を示す役割を担います。一方、営業店は、地域や顧客のニーズを深く理解しており、きめ細やかな対応や個別具体的な支援を行うことができます。

これらの異なる視点と強みを有機的に連携させることで、地域社会のニーズに合致し、かつ効果的なESG金融支援を展開できます。

本部の役割:現場サポート、視点の整理、標準化

本部は、ESG金融推進の司令塔として、以下の役割を担います。

  • 現場サポート: 営業店が抱える課題や疑問に対して、専門知識や情報を提供し、活動を支援します。ESGに関する研修やセミナーを実施し、営業店のスキルアップを図ることも重要です。
  • 視点の整理: ESG金融に関する最新の動向や、地域社会のニーズ、自社の強みなどを分析し、ESG金融戦略の方向性を明確化します。これにより、一貫性のある取り組みを推進することができます。
  • 標準化: ESG評価基準や融資審査プロセス、顧客向け情報提供ツールなどを標準化することで、営業店の業務効率化と質の向上を図ります。また、標準化を通じて、組織全体でのノウハウ共有を促進します。

営業店の役割:個別対話・支援、情報共有

営業店は、顧客との接点を活かし、以下の役割を担います。

  • 個別対話・支援: 顧客企業のESGに関する課題やニーズを丁寧にヒアリングし、最適な金融商品やサービス、コンサルティングを提供します。ESG経営への意識向上を促すことも重要です。
  • 情報共有: 顧客企業の状況や地域社会のニーズなど、現場で得られた貴重な情報を本部にフィードバックします。これにより、本部は戦略の改善や新たな施策の検討を行うことができます。

組織内連携や行内教育の強化

本部と営業店の連携を強化し、組織全体でESG金融を推進するためには、以下の取り組みが重要です。

  • 定期的な情報交換: 定例会議や情報共有システムなどを活用し、本部と営業店が密にコミュニケーションをとる機会を設けます。
  • 人事交流: 本部と営業店の職員を定期的に異動させることで、お互いの業務理解を深め、連携を強化します。
  • 行内教育: ESGに関する知識やスキルを習得するための研修プログラムを実施し、全職員のESG意識を高めます。

特に、支店長クラスのリーダーシップが重要です。支店長がESG金融の重要性を理解し、積極的に推進することで、組織全体の意識改革を促し、本部と営業店の連携を強化することができます。

これらの取り組みを通じて、地域金融機関は、ESG金融を効果的に推進し、地域社会の持続可能な発展に貢献することができます。中小企業の皆様も、地域金融機関との連携を強化し、共にESG経営に取り組むことで、自社の成長と地域社会への貢献を両立させることができるでしょう。

中小企業がESG地域金融から得られるもの

これら金融機関の視点を理解しながらも、ESG地域金融を進めることで得られるものは意外と大きいものです。まずはESG地域金融の現状を知る5つのメリットについて解説していきましょう。

中小企業がESG地域金融を知る5つのメリット

ESG地域金融について理解を深めることは、中小企業のリーダーである皆様にとって、多くのメリットがあります。

  • 新たな資金調達の可能性: ESG経営への取り組みを評価する金融機関が増えており、融資を受けやすくなったり、有利な条件で資金調達できる可能性があります。
  • ビジネスチャンスの拡大: ESGを意識した事業展開は、新たな顧客や市場を開拓するチャンスにつながります。環境問題や社会課題への関心が高まる中、ESGに配慮した商品やサービスは、消費者や取引先からの評価を高め、競争力を強化します。
  • 地域社会との連携強化: ESG地域金融は、地域金融機関との関係を深めるだけでなく、地域社会との繋がりを強化する機会にもなります。地域貢献活動への参加や、地域資源を活用した事業展開を通じて、地域社会からの信頼と共感を獲得し、持続的な成長を遂げることができます。
  • リスク管理の強化: ESGリスクを適切に管理することで、企業の事業継続性を高め、予期せぬ事態による損失を最小限に抑えることができます。
  • 従業員エンゲージメントの向上: ESG経営は、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保・定着にもつながります。企業の社会的責任を果たすことで、従業員の帰属意識や働きがいを高め、組織全体の活性化を促します。

地域金融機関との連携強化における4つの重要性

ESG地域金融を効果的に活用するためには、地域金融機関との連携強化が不可欠です。

  • 資金調達: ESG経営への取り組みを積極的にアピールすることで、融資や投資を受けやすくなります。
  • 情報収集: ESG経営に関する最新情報やノウハウ、成功事例などを共有してもらうことができます。
  • コンサルティング: ESG経営に関する課題や疑問点について相談し、専門的なアドバイスを受けることができます。
  • 地域ネットワークの活用: 地域金融機関のネットワークを通じて、新たなビジネスパートナーや顧客との出会いの機会を得ることができます。

ESG経営に向けて、実践ガイドを活用する

「ESG地域金融実践ガイド」は、ESG経営を実践するための具体的な方法や考え方を示した貴重な資料です。ガイドブックには、様々な地域金融機関の成功事例や、具体的な取り組み方法、留意点などが詳しく解説されています。

ガイドブックを参考に、自社の強みや地域の特徴を活かしたESG経営を実践することで、持続的な成長と地域社会への貢献を実現しましょう。

まとめ:ESG地域金融の実践ポイント

今回の記事では、「ESG地域金融実践ガイド」を参考にしながら、地域金融機関がESG金融を実践するための具体的なポイントを解説しました。

  • ESG金融は、地域社会全体への影響を考慮しながら進めることが大切です。取引先企業だけでなく、その先のバリューチェーンや地域全体にどんな影響があるかを考えましょう。
  • ESG金融には、地域資源・課題、主要産業、個別企業への支援という3つのアプローチがあります。自社の強みや地域の特徴を活かしながら、最適なアプローチを選択し、それらを組み合わせて相乗効果を高めることが重要です。
  • どのアプローチにおいても、地域資源の把握と価値の理解、バリューチェーンの理解、地域へのポジティブインパクトの創出、環境変化への対応という4つのポイントが重要となります。
  • ESG金融を効果的に進めるためには、本部と営業店の連携が欠かせません。それぞれの役割を明確にし、協力し合うことで、より良い成果が得られます。
  • 中小企業の皆様も、地域金融機関と積極的に連携し、ESG経営に向けて共に歩んでいくことが、持続可能な地域社会の実現につながります。

「ESG地域金融実践ガイド」には、ここで紹介した以外にも、ESG金融に関する多くの情報や事例が掲載されています。ぜひ、ガイドブックを手に取って、今後の経営戦略の参考にされてください。

次回は、いよいよアプローチ別の実践編です。「ESG地域金融実践ガイド」を読み解きながら、地域金融機関がESG金融を実践するための具体的なステップや、考慮すべきポイントを解説していきます。ぜひ、次回の記事も参考にしていただき、ESG経営への第一歩を踏み出してみてください。

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この記事を書いた人

総合電機メーカーを20年間勤務、その後ものづくり企業支援のために中小企業診断士資格を獲得して独立し、15年目に入った経営コンサルタントです。現在、集中支援している顧問企業の社会課題と向き合うため、中小企業GX情報サイトを構想しました。皆さまと一緒に成長したく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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