脱炭素経営を加速!中小企業版SBT申請方法と支援制度を分かりやすく紹介

脱炭素経営を加速!中小企業版SBT申請方法と支援制度を分かりやすく紹介

「脱炭素」って言葉、最近よく聞くけど、結局何すればいいの?ウチみたいな中小企業には関係ないんじゃない?そんな風に思っていませんか?

実は、脱炭素はもはや大企業だけの問題ではありません。中小企業にとっても、生き残りをかけた重要な経営課題となりつつあります。

そこで登場するのが「SBT(Science Based Targets:科学に基づいた目標)」です。これは、地球温暖化を食い止めるために、科学的な根拠に基づいて企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと。

「SBTなんて難しそう…」と尻込みする必要はありません!実は、中小企業向けのSBT申請制度「中小企業版SBT」があるんです。これは、大企業向けのものよりもハードルがグッと低く、中小企業でも取り組みやすいのが特徴です。

この記事では、製造業の現場で働くあなたにも分かりやすく、中小企業版SBT申請の方法やメリット、そして申請をサポートしてくれる各種支援制度について解説していきます。

脱炭素経営は、コスト削減や企業価値向上、そして何よりも地球の未来を守ることにつながります。この機会に、ぜひSBT申請に挑戦し、脱炭素の波を乗り越えましょう!

目次

中小企業版SBTとは?脱炭素経営を後押しする科学的根拠に基づいた目標設定

そもそもSBTさえも聞き慣れない方がほとんどだと思います。そのため、今回のテーマであるSBTとはどういうものか?シンプルに解説を加えてから本題に入っていきたいと思います。

SBTの定義と目的

SBT(Science Based Targets)とは、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定が目指す「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑え、1.5℃に抑える努力をする」という目標を達成するために、企業が設定すべき排出削減目標を科学的に算出し、その目標を達成することで、地球温暖化の抑制に貢献することを目指します。

中小企業版SBTの特徴と4つのメリット

中小企業版SBTは、大企業向けのSBTと比べて、以下のような特徴とメリットがあります。

メリット1:申請のハードルが低い

中小企業版SBTでは、大企業版と比べて提出書類が簡略化されており、目標設定の選択肢も2つに絞られています。そのため、リソースやノウハウが限られている中小企業でも、比較的容易に申請することができます。

メリット2:承認までの期間が短い

大企業版SBTでは、申請から承認まで数ヶ月かかることもありますが、中小企業版SBTでは、最短で数週間で承認される場合があります。

メリット3:費用が抑えられる

大企業版SBTでは、目標設定や申請に専門家のサポートが必要となる場合があり、費用がかさむことがあります。一方、中小企業版SBTでは、自社で申請することも可能であり、費用を抑えることができます。

メリット4:脱炭素経営の推進に貢献

中小企業版SBTを取得することで、自社の排出量削減目標を明確化し、脱炭素経営を具体的に推進することができます。また、SBT取得は、企業の環境意識の高さをアピールし、取引先や顧客からの信頼獲得にもつながります。

SBT取得がもたらす3つの効果

SBTを取得することで、企業は以下のような効果を得ることができます。

効果1:企業価値の向上

SBTを取得した企業は、環境意識の高い企業として評価され、投資家や金融機関からの資金調達が有利になる可能性があります。また、ESG投資の対象となり、企業価値の向上につながることも期待できます。

効果2:競争優位性の獲得

SBTを取得することで、環境問題に積極的に取り組む企業として、競合他社との差別化を図ることができます。また、環境意識の高い顧客からの支持を得やすくなり、市場での競争優位性を獲得できる可能性があります。

効果3:リスク管理の強化

SBTを取得することで、気候変動リスクに対する企業のレジリエンスを高めることができます。また、将来的な炭素税導入や規制強化などのリスクにも備えることができ、持続可能な事業運営につながります。

中小企業版SBT申請の流れをステップごとに解説!

SBT申請は、一見複雑そうに見えますが、以下の3つのステップを踏むことで、スムーズに進めることができます。

ステップ1:排出量算定の準備

SBT申請の第一歩は、自社の温室効果ガス排出量を把握することです。

スコープ1・2排出量の算定

SBTでは、主にスコープ1とスコープ2と呼ばれる2種類の排出量を算定します。

  • スコープ1排出量: 自社の事業活動によって直接排出される温室効果ガス(工場での燃料燃焼、社有車のガソリン消費など)
  • スコープ2排出量: 自社が購入した電気や熱の使用に伴い、間接的に排出される温室効果ガス

これらの排出量を算定するには、燃料の使用量や電気の使用量などのデータを収集し、それぞれの排出係数を掛け合わせる必要があります。排出係数とは、ある活動や製品が排出する温室効果ガスの量を数値化したものです。

排出量の算定は、専門的な知識が必要となる場合もあるため、自社で行うのが難しい場合は、専門家やコンサルタントに依頼することも検討しましょう。

必要書類の収集

排出量算定に必要なデータに加えて、SBT申請には、以下の書類が必要になります。

  • 企業情報: 企業名、所在地、事業内容、従業員数など
  • 排出量データ: スコープ1・2排出量の算定根拠となるデータ
  • 目標設定に関する情報: 削減目標値、目標達成年、目標達成に向けた計画など

これらの書類は、SBTiのウェブサイトからダウンロードできる申請フォームに記入し、提出します。

ステップ2:目標設定と申請

排出量算定が完了したら、次は削減目標を設定し、SBTiに申請します。

削減目標の設定

中小企業版SBTでは、以下の2つの目標設定方法から選択できます。

  • 絶対目標: 基準年からの排出量を一定割合削減する目標
  • 強度目標: 生産量や売上高などの事業活動単位当たりの排出量を一定割合削減する目標

どちらの目標設定方法を選ぶかは、自社の事業特性や将来の事業計画などを考慮して決定しましょう。

目標値は、SBTiが定める基準を満たす必要があります。基準は、産業セクターや企業規模によって異なり、SBTiのウェブサイトで確認できます。

SBTiへの申請

目標設定が完了したら、申請フォームに必要事項を記入し、SBTiに提出します。申請は、オンラインで行うことができます。

ステップ3:目標承認と公表

申請後、SBTiは目標の妥当性を審査し、承認または却下の判断を行います。

承認結果の確認

審査の結果は、通常数週間以内にメールで通知されます。承認された場合は、SBTiのウェブサイトに目標が掲載されます。

目標の公表と進捗管理

目標が承認されたら、自社のウェブサイトやCSR報告書などで公表し、ステークホルダーに共有しましょう。また、定期的に進捗状況をモニタリングし、目標達成に向けて計画を見直すことも重要です。

申請をスムーズに進めるためのポイントと注意点

SBT申請をスムーズに進めるために、以下のポイントと注意点を押さえておきましょう。

正確な排出量算定の重要性

排出量算定は、SBT申請の基礎となる重要なプロセスです。排出量の算定が不正確な場合、目標設定や審査に影響を及ぼす可能性があります。

排出量算定には、専門的な知識や経験が必要となる場合があります。自社で算定するのが難しい場合は、専門家やコンサルタントに依頼することも検討しましょう。

目標設定の考え方と具体的な数値目標

目標設定は、SBT申請の核となる部分です。目標値は、SBTiが定める基準を満たす必要があり、基準は産業セクターや企業規模によって異なります。

目標設定の際には、以下の点を考慮しましょう。

  • 自社の事業特性: どのような事業活動が排出量に大きく影響しているのかを把握し、重点的に削減すべき分野を特定する
  • 将来の事業計画: 将来の事業拡大や新規事業の立ち上げなどを考慮し、長期的な視点で目標を設定する
  • 技術的な実現可能性: 現実的に達成可能な目標を設定する

目標値は、具体的な数値で設定する必要があります。目標達成年までに、スコープ1・2排出量を何%削減するのか、具体的な数値目標を定めましょう。

申請書類の準備と提出期限

SBT申請には、企業情報、排出量データ、目標設定に関する情報などの書類が必要です。これらの書類は、SBTiのウェブサイトからダウンロードできる申請フォームに記入し、提出します。

申請書類の準備には、時間と手間がかかる場合があります。余裕を持って準備を進め、提出期限を守りましょう。

申請後の進捗管理と目標見直し

SBT申請は、目標が承認された後も終わりではありません。定期的に進捗状況をモニタリングし、目標達成に向けて計画を見直すことが重要です。

目標達成が困難な場合は、目標値の見直しや計画の修正を行うことも検討しましょう。SBTiは、企業の状況に応じて、柔軟な対応を認めています。

中小企業を支援!SBT申請に役立つ補助金・助成金制度

SBT申請には、専門家への相談や排出量算定ツールの導入など、一定の費用がかかる場合があります。しかし、中小企業のSBT取得を後押しするため、国や自治体、各種団体が様々な補助金・助成金制度を設けています。これらの制度を活用することで、費用負担を軽減し、スムーズにSBT申請を進めることができます。

中小企業向けSBT導入支援事業

経済産業省が実施する「中小企業向けSBT導入支援事業」は、中小企業がSBTを取得するための費用を補助する制度です。具体的には、専門家への相談費用や排出量算定ツールの導入費用などが対象となります。

補助率は、費用の2/3(上限50万円)となっており、SBT取得を目指す中小企業にとって、大きな助けとなるでしょう。

省エネ補助金

省エネ補助金は、工場やオフィスなどの設備を省エネ性能の高いものに更新する際にかかる費用を補助する制度です。SBTの目標達成には、省エネ対策が不可欠であり、この補助金を活用することで、設備投資の負担を軽減しながら、排出量削減を進めることができます。

補助率や対象設備は、年度や事業によって異なりますが、多くの場合、費用の1/2~1/3程度が補助されます。

再生可能エネルギー導入補助金

再生可能エネルギー導入補助金は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー設備を導入する際にかかる費用を補助する制度です。再生可能エネルギーの利用は、SBTの目標達成に大きく貢献するため、この補助金を活用することで、再生可能エネルギーの導入を促進し、排出量削減を進めることができます。

補助率や対象設備は、年度や事業によって異なりますが、多くの場合、費用の1/2~1/3程度が補助されます。

その他の支援制度

上記以外にも、SBT申請を支援する様々な制度があります。

  • 自治体独自の補助金: 一部の自治体では、中小企業のSBT取得を促進するため、独自の補助金制度を設けています。
  • 金融機関の融資制度: 一部の金融機関では、SBTを取得した企業に対して、低金利で融資を行う制度を設けています。
  • コンサルティング支援: 専門家によるSBT申請に関するコンサルティング支援を受けることができます。

これらの制度を積極的に活用することで、費用負担を軽減し、スムーズにSBT申請を進めることができるでしょう。

よくある質問と回答

申請に必要な費用は?

中小企業版SBTの申請には、SBTiへの申請手数料として1,250米ドル(為替レートにより変動)が必要です。これは、SBTiの運営や審査にかかる費用を賄うためのものです。

ただし、申請手数料以外にも、以下のような費用が発生する可能性があります。

  • 排出量算定費用: 自社で算定できない場合は、専門家やコンサルタントに依頼する必要があります。費用は、算定範囲や作業量によって異なりますが、数万円から数十万円程度が目安です。
  • 目標設定支援費用: 専門家による目標設定のアドバイスやサポートを受ける場合は、費用が発生します。費用は、サポート内容によって異なりますが、数万円から数十万円程度が目安です。
  • その他: 申請書類の作成支援や、SBT取得後の進捗管理支援などを受ける場合は、別途費用が発生する場合があります。

これらの費用は、中小企業にとって大きな負担となる可能性があるため、前述した中小企業向けSBT導入支援事業などの補助金制度を積極的に活用することが重要です。補助金制度を活用することで、費用負担を大幅に軽減できる場合があります。

申請にかかる期間は?

中小企業版SBTの申請から承認までの期間は、通常数週間から数ヶ月程度です。ただし、申請内容に不備があったり、追加の資料提出が必要になったりする場合には、さらに時間がかかることもあります。

承認されなかった場合はどうなる?

申請が承認されなかった場合は、SBTiからその理由が通知されます。目標値がSBTiの基準を満たしていない場合や、申請書類に不備がある場合などが考えられます。

不承認となった場合は、SBTiからのフィードバックを参考に、目標値や申請書類を見直し、再申請することができます。

目標達成できなかった場合は?

目標達成できなかった場合でも、ペナルティなどは特にありません。ただし、目標未達成の理由を分析し、目標の見直しや計画の修正を行うことが重要です。

SBTiは、企業の状況に応じて、柔軟な対応を認めています。目標達成が困難な場合は、SBTiに相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

まとめ:中小企業版SBTで脱炭素経営を加速させよう!

この記事では、中小企業版SBT申請の方法やメリット、支援制度について詳しく解説しました。

改めて、SBT申請のメリットを再確認しましょう。

  • 企業価値の向上: ESG経営への取り組みをアピールし、投資家や金融機関からの評価を高めることができます。
  • 競争優位性の獲得: 環境意識の高い顧客や取引先からの信頼を得て、市場での競争力を強化できます。
  • リスク管理の強化: 気候変動リスクや将来的な規制強化に備え、持続可能な事業運営を実現できます。

これらのメリットを享受するためには、今すぐ行動することが重要です。脱炭素社会への移行は、すでに世界的な潮流となっており、対応が遅れるほど、企業の競争力は低下していく可能性があります。

SBT申請は、自社だけで行うことも可能ですが、専門家によるサポートを活用することで、よりスムーズかつ効率的に進めることができます。排出量算定や目標設定のアドバイス、申請書類の作成支援など、専門家の知見を借りることで、申請の成功率を高めることができるでしょう。

中小企業版SBTは、中小企業にとって、脱炭素経営を加速させる絶好の機会です。この記事を参考に、ぜひSBT申請に挑戦し、持続可能な社会の実現に貢献しましょう。

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この記事を書いた人

総合電機メーカーを20年間勤務、その後ものづくり企業支援のために中小企業診断士資格を獲得して独立し、15年目に入った経営コンサルタントです。現在、集中支援している顧問企業の社会課題と向き合うため、中小企業GX情報サイトを構想しました。皆さまと一緒に成長したく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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